2014年5月6日火曜日

キャリア形成について(2) キャリア開発の必要性

 キャリアとは、生涯にわたる仕事のつながりを考えることであり、「人の生き方そのもの」であるともいえる。これまでとこれからのつながりの中で、今を考えなければならない。

(1)キャリア開発
年功序列から成果主義へ移った現在、従業員は「企業依存型」から脱却し、「労働市場で通用する実力・能力・スキルを持ち、自律的にキャリア開発を行う」ことが求められる。

a)社会的ニーズ
  • 少子・高齢化の時代を迎え、中高年者の能力開発、セカンドキャリア開発をはじめ、若年層のキャリア開発にも積極的に取り組み、個人が生きがいや働き甲斐を持つことによる、高齢化社会全体の活性化を図る必要がある
  • 少子化による労働力の漸次減少傾向の中、専門性の高い労働力の育成と確保が喫緊の課題
  • 終身雇用・年功序列が崩壊し、雇用の流動化の中で転職を通じたキャリア形成傾向が急増
  • 女性の能力再開発は、少子・高齢化による労働力減少をカバーする重要な課題
b)企業・雇用ニーズ
  • 競争力のある有能な人材の育成は、組織の生き残りのための重要な課題(例:Webの開発力、パートナー企業とのコミュニケーション力など)
  • 組織における個人の自己実現を最大限可能にするための能力開発・キャリア開発を行い、個人を動機づけ活性化し成果を上げる
  • 個人が主体的・自律的にキャリア開発を行うことを側面から支援し、個人と企業が相互にWin-Winの成果を得ることを狙う
c)個人のニーズ
  • 成果主義(目標管理制度)社会で自ら能力・実力を評価され雇用を確保するためには、常にキャリア意識を持ち、自立的に実力を磨き、労働市場におけるキャリア競争力を育成しなければならない
  • 自分を最大限に生かせる適切な職業選択をするために、キャリアの方向性を決定できる力の醸成と情報収集力を持つ
  • 長い人生における生涯発達を目指し、ライフデザインやキャリアデザインを行う。それを人生の節目節目に見直し、積極的に能力開発、キャリア開発に努め、働き甲斐や生きがいを自ら創造し、ワーク・ライフバランスを上手くとって豊かな人生を送る
自分の生き方=キャリア開発について真剣に考えられることが求められる時代になったことを、しっかり認識しなくてはならない。技術と信頼を勝 ち得ることで仕事が得られ、将来独立する道も開けてくる。何もない状態での就業はよちよち歩きの仕事であり、その報酬はミルクに過ぎない。

(2)ライフステージとキャリア開発

キャリアは単に青年期に選択され、決定され、それが変化せずそのまま維持されるのではなく、キャリアは生涯にわたって発達し変化するものである。(Super,D.E 1910-94 コロンビア大学名誉教授)

スーパーはキャリアの発達段階を「成長・探索・確立・維持・衰退※1」の五期に分け、その一連のサイクルを「マキシサイクル」と呼ぶ。転職、異動、定年などの変化のたびに新たなミニサイクルが発生し、その都度マキシサイクルの中でミニサイクルが「新成長―新探索―新確立」と螺旋状に繰り返され、発達していくとしている。

 確立期(25~44歳)にある人は、この時期をなんとなく過ごしてはならない。一冊の本を読むときにも、新たな技術を身につけるときも、このマキシサイクルを意識することが重要である。

※1:アメリカの平均寿命が68歳前後のためこのような表現になっている。日本の平均寿命に鑑みて、図では衰退期ではなく解放期と表現している。
 
(3)キャリアアンカー
 キャリアアンカーとは、人が自らのキャリアを選択する際に最も大切な(どうしても犠牲にしたくない)価値観や欲求のことである。あるいは、周囲が変化しても自己の内面で不動なもののことを言う。アメリカの組織心理学者エドガー・H・シャインが定義した。

a)キャリアアンカーを知る目的
・職業選択において自分にとって最も重要視すべき要素がわかる
・再就職後の安定性を高める
・今後のキャリア形成の方向性が明確になる

b)8種類のキャリアアンカー・・・自分の適性への気づきが重要
  1. 専門コンピタンス
    特定の仕事・職業・分野に執着、こだわり続ける。専門性の強化、専門家としての誇りに生きる。組織の中でその分野の管理職位に進むことをよしとするが、管理業務より専門性を重視する。
  2. 経営管理コンピタンス
    総合的なマネジメント職に就きたい。多様な経験、ローテーションを望み、特定分野のみに留まりたくない。組織全体の業績の工場に大きなチャレンジ、張り合いを感じる。 
  3. 起業家的創造性
    進んでリスクをおかし、当面の障害を克服して自分の組織や企業を創始、創業しようとするか、あるいは条件や機会が熟せば独立、創業しようといつも心がける。  
  4. 自律/自立
    自分のやりたいことを自分のやり方で自由に決めてやっていきたい。規制や慣行などに縛られることの多い組織や職場にはいたくないし、そういうところへは処遇があがっても行きたくない。
  5. 社会への貢献
    人間の幸せや社会・環境に貢献したい。あるいは何らかの理念、または自己の信念の実現に貢献したい。そのような奉仕・貢献活動を所属組織の内外で追求していく。
  6. 安定
    現実的、経済的な安定感や保障を何より重視したい。特に雇用の安定や年金の保証などは最大の関心事である。先行き不明の問題にリスクをとって取り組むようなことはしたくない。
  7. チャレンジ
    解決不可能と思われるような困難、危険、複雑な課題(難敵、新記録、変化など)の達成に立ち向かう。達成後のメンテナンスには興味がなく、新たなチャレンジを他に求める。
  8. 全体性と調和(ワークライフバランス)
    仕事と非仕事ないし組織内外の自分の活動と家族生活の調和など、最適バランスを最も重視する。自分のライフワークをまとめたいと考えており、それができるような仕事を考える。

(4)生涯を通じたキャリア形成
図は、キャリア形成の一連のプロセスを、一つの輪として描き、労働者がそのようなプロセスを人生の中で何回か繰り返しながら、職業的な発達 を遂げていく様子を表している。キャリア選択のための6ステップが、職業生涯の節目節目で実施され、個人のキャリア形成がレベルアップや範囲の広がりを伴 いながらスパイラルアップして進んでいく。

年齢と共に輪が大きくなっているのは、キャリア形成の進展の中で、労働者のキャリアが広がっていく(知識・経験の広がりの意味)様子を表している。

労働者の専門性という点から見ると、年齢と共に、そのキャリア形成の中で数ある職業選択肢の中から自分の適正・能力や希望に合った領域を絞り込みながら、その専門性が少しずつ深められていくという側面もあることに留意が必要である。



新しいことを吸収するチャレンジ能力と、他人をその気にさせるマネジメント能力が交差して逆転するのが38歳頃とされている。その時までに、やりたいことをやって生涯の方向性を定めておかなければならない。

一般に経験者として認められる年数は4年。現在の年齢に4を足した年齢の時に、特定の仕事に定着し、責任を果たし生産性を上げられる中核的存在になっていることを思い描きながら仕事選びを進める必要がある。



 
◆人生役割(ライフロール)
キャリア発達とパーソナルは発達は互いに関連しあっている。キャリア発達は人生上における人生役割(ライフロール)との密接な相互関係からなる。

個人の各ライフステージ上の役割は、キャリア選択、意思決定に関して非常に重要な意味を持っている。具体的な人生役割は以下の9つである。

  1. 子供・・・育まれ成長する時期/親が年老いて、親に頼られる時期
  2. 学生
  3. 余暇人―余暇を楽しむ人
  4. 市民―地域活動など地域への貢献の役割
  5. 労働者
  6. 配偶者―妻・夫
  7. 家庭人(ホームメーカー)-自分の家庭を管理維持する
  8. 年金生活者

0 件のコメント:

コメントを投稿